不動産移転税(Real Estate Transfer Tax“RETT“)の改正案

連邦財務省は、連邦各州に対し、不動産移転税法改正案を送付しました。この草案が制定されれば、ドイツの不動産移転税は大幅に改正されることになり、ドイツの不動産資産を持つ多国籍企業にとっては、グループ内での組織再編成が不動産移転税の課税なしに可能になります。 この法案は2024年1月1日から施行される予定ですが、この草案は審議の過程で変更される可能性があり、また、完全に否決される可能性もあります。

1.株式移転取引への課税

現行制度

原則として以下の取引に関して不動産取得税が課されます(不動産移転税法第1条2b項、3項)。

  • 株主変更ルール(Shareholder change rule)

ドイツ所在不動産を有する法人の株主構成が10年以内に直接的または間接的に変更され、少なくとも90%の株式が新たな株主に移転される場合

  • 株式統合ルール(Share unification rule)

ドイツ所在不動産を有する法人の株式を移転した結果、直接的又は間接的にその会社の株式の少なくとも90%が単一の取得者に統合される場合

2.改正案

改正案では、上述のような複数ある株式移転取引に係る課税ルールを一つにまとめることとしており、具体的には以下の通りの改正が見込まれます。

  • 現行の不動産移転税法第1条2項から4項までの規定を廃止(つまり上記の規定を廃止)し、株式を100%取得した場合にのみ不動産移転税を課税します。
  • ただし、単一の株式取得者だけではなく、複数の取得者グループ(“Acquirer group”)が協調して全株式を取得した場合、課税される可能性があります。これは、不動産移転税を回避するために、第三者に一部の株式取得を依頼するようなケースは 株式の主要な取得者への“利益供与(Serving interest)”として扱われ、結果として不動産移転税が課される可能性があります。

3.グループ間取引に係る免税規定

  • 現行制度では不動産移転税法第6a条に基づき、一定の要件を満たすグループ間株式移転取引に関しては、不動産移転税を課さないこととしています。
  • 改正案では、不動産に対する決定的な影響力を持つ人物が(株式)移転取引によって変わらない場合、当該(株式)移転取引は不動産取得税が課されない見込みです。「決定的な影響力」とは、例えば不動産を保有する会社の全株式が持ち株の連鎖における最終株主によって直接または間接に保有されている場合に存在するとみなされます。なお、移転取引後5年間の留保期間を遵守する必要があります。
  • したがって、不動産の移転の手法(例:事業移転、不動産保有会社株式の移転、不動産そのものの移転等)や適用法(EU/EEA法または第三国法)、事前又は事後の保有期間に関わらず、100%グループ内のすべての移転がグループ間取引の免税規定の恩恵を受ける見込みです。

4.見解

草案は、ドイツの現行の不動産移転税制度を大幅に変更し、簡素化するものです。この草案が施行されれば、納税者の負担が大幅に軽減され、企業グループにおける望ましくない複数の不動産移転税課税を緩和するための柔軟性が高まります。同時に、新規則では、異なる納税者が「取得者グループ」として協調して不動産所有企業の株式を取得した場合の不動産移転税課税も想定しています。

詳細はニュースレター本文をご確認ください。

JBN Newsflash_RETT reform 2024

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